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妾から連想した思い出 |
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ある時、赤坂の小さなバーに連れていかれ、そこで「抱擁」と言う箱崎晋一郎が歌った歌を聞かせてほしいと言われた。 歌にはかなり自信があるものの、その歌は知らなかったので、自信がないといったんは断った。 だが簡単な歌なんで先ず聴いてみてほしい、と言われて聴いてみると音域も狭く簡単そうなので歌う事にした。
その女性は30代の中頃だろうか。 頬をよせあった あなたのにおいが 私の一番好きな においよ ……あなたしか 愛せない 女にいつか なってしまったの 泣きたくなるほど 貴方が好きよ、と言う歌詞なのだが、泣きたくなるほどのくだりでその女性が本当に泣き出してしまった。 女性はある衆議院議員の”おんな”だった。 24歳からこの年になるまで他の男を愛する事を禁じられ、30以上も年の開きのある、自分の父親より年上の男の妾にされてしまった。 いや、自分でもお金に不自由のない生活に憧れていたのかも知れない。 私とバーに行ったのはその男と別れた直後だった。 家を買ってもらった、と言って嬉しそうな笑顔の中に、何とも言えない寂しそうな涙がこぼれていたのを忘れる事が出来ない。 この議員はまた当選した。 この議員の名前を見る度に彼女の事を思い出す。 ☆ ある巨大企業の社長とその妾と食事をすることになった。 この女性は元芸者で4千万円で引かせた、と言う。 これこそ日本独特の人身売買、と大げさな事を言うつもりはないが、置屋は色々な芸を仕込むのにお金もかかっており、この世界では、当たり前、の事なのだ。 食事をしながらその女性が社長に”おねだり”していた。 ダイヤモンドの石だけ欲しい、というのだ。 秘書が宝石屋に連絡して近くのホテルで待ち合わせる事になった。 2人の宝石商が手もみをするように現れ、アタッシュケースの中の黒いケースをおもむろに開けると様々な形にカットした眩いばかりのダイヤやルビーが綺麗に並べてある。 一目で涙型にカットしたダイヤモンドが気に入ったようで値段を聞くと、2500万円だと言う。 社長は1千万どまりだという。 つまり一千万までしか出さないと言う事だ。 そこからが正念場、女性のおねだりが執拗に始まり、ついにそのダイヤを仕留めた。 その社長いわく、入れ物には入れられる限度があるが、女の穴には1億でも2億でも際限なく入るからな〜〜と。 宝石はその日の内に同じ宝石屋に持ち込み、2300万円程度で引き取ってもらう事になり、同じような形のジルコンのイミテーションダイヤが彼女のコレクションに加えられる。 この人のいい社長は既に亡くなっている。 ☆ ある所でかなりの要職にある人を紹介された。 横にいるのは娘だと言う、その美しさに思わず、随分と綺麗なお嬢さんですね、変な虫が付かないかと心配でしょうがないでしょう。 一端はその場を離れたものの、場違いともいえるその美しさに時々目が行ってしまう。 しかしどうもその様子がおかしい。 誰に尋ねても娘だと言う。 見る所どう見ても親子には見えない。 親しすぎるのだ。 男と女はどんなに隠してもできてしまっていると何かの仕種で分かる事がある。 注意してみるとやはりおかしい。 そこで改めてまわりの人に、あれ娘じゃないでしょう、と言うと、分かりますか、と言う。 あんな真面目そうな人でも女を囲うのが不思議だというと、真面目すぎて遊びが下手で、こんな場所まで押しかけるようなでしゃばり女を妾なんかにするもんだから、益々自由が利かないのだ、と笑っていた。 その時、実は、と言って変な虫の話をしたら、皆が大笑いをして、自分のことを変な虫と言われても反論出来ないのは気の毒な事だ、と更に盛り上がった。 おしまい |
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