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日経ビジネスオンライン 2009年3月25日(水) 児玉博
3月17日付「朝日新聞」朝刊は次のように伝えている。 「準大手ゼネコン『西松建設』から民主党・小沢代表の資金管理団体『陸山会』への違法献金事件に絡んで、東北地方のゼネコン談合組織が小沢事務所側の意向をくんでいたとされる問題に、大手ゼネコン『鹿島』の東北支店元幹部が関与していた疑いのあることがわかった」 記事にあるように小沢の公設秘書の逮捕に端を発した違法献金事件はかつてのゼネコン汚職を彷彿させるような様相を呈し始めた。 1993(平成5)年、自民党最高実力者だった元自民党副総裁、金丸信の逮捕をきっかけに起きたゼネコン汚職事件。 莫大な予算がつぎ込まれる公共事業を背景にして受注を調整し、業者を指名する“天の声”を発する。見返りは受注額の3%が相場とされた裏献金。“天の声”を発するのは自民党建設族の大物議員や地方の実力首長たち。工事受注の調整役はゼネコンの有力者たちだった。 こうした構図が戦後日本の保守政治を支え続けてきた。その戦後を象徴する癒着の構図にメスを入れたのがゼネコン汚職であった。 現役の衆院議員、県知事、政令指定都市の市長、大手ゼネコンの幹部などが逮捕されたこの汚職事件は自民党、中でも権力の中枢を担い続けてきた旧田中派の流れを汲む竹下派(経世会)の内部分裂を決定的なものにし、非自民党政権である細川護熙を首班とした連立政権誕生をもたらした。 そして、政権交代が現実的なものとして語られようとする矢先に起きたのが今回の事件であった。 検察は霞が関の意向を斟酌した、検察は小沢政権の阻止に走った・・・。様々な憶測、様々な怪情報が乱れ飛んでいる。ただ、一点言えることは事件を手がける特捜部が小沢の公設秘書の逮捕に踏み切った大義名分をいかに理論づけるかに躍起になっているという事実だ。 特捜部は原資が「西松建設」と知りながら受け取った献金額2100万円の性格に限りなく贈収賄の意味合いが強い、だから逮捕に踏み切ったとの絵図を描いているようである。小沢への献金はかつてのゼネコン汚職の構図に限りなく近い、とする検察はその情報をリークする一方で「鹿島」をはじめとするゼネコン各社からの事情聴取に必死になっているのである。 確かに特捜部が狙い定めている節がある国土交通省発注の「胆沢ダム」(岩手県。総事業費およそ2440億円)に代表されるように東北地方は小沢王国である。 手元に残る資料を見れば大手ゼネコンで作られていた小沢後援会「桐松クラブ」の名簿には「鹿島」盛岡営業所所長を会長として大手ゼネコンの盛岡営業所所長の名前がずらりと並ぶ。また、同じように「鹿島」盛岡営業所所長の名前で選挙の動員を呼びかける通知書などもある。 先のゼネコン汚職でも小沢王国はびくともしなかった。その中心には常に「鹿島」の影が見え隠れしていた。 しかし、である。検察当局が流している情報は自らの正当性を必要以上に強調しようとしているように見えてならない。これでは逮捕の正当性の弱さを自らが証明しているようなものではないか。 小沢とゼネコンとの談合疑惑の情報が山のように流される中、やはり「西松建設」がダミー政治団体を使いパーティー券800万円以上購入し、また「西松建設」が個人献金を装い社員の個人名で献金していた事実が明らかになっている経済産業大臣、二階俊博の捜査はどうなっているのか。二階の資金管理団体の会計責任者の事情聴取が予定されていながら、自民党幹部らの抗議によって検察幹部の判断でいったん事情聴取が見送られたのはなぜなのか。 「西松建設」から押収した膨大な資料の中からは同社と二階との親密さを示す資料やメモが多数見つかってもいる。建設業界では、「二階は西松(建設)の顧問みたいなもんだ」 とする声は少なくない。 経産相の地位にある二階だが、その二階の元を日に何度も国土交通省の幹部が訪ねるほど、国土交通省への二階の影響力は絶大である。 数週間前には再び経営危機が噴出している日本航空の社長、西松遥が経営幹部を伴い、二階を訪れている。二階はその場で自ら電話を取り、経済産業政策局長、松永和夫を呼び出し、「話を聞いてやってくれ」 と両者を引き会わせている。 日本政策投資銀行からの融資について話が出たのではないかとも言われている。二階の力の一端が垣間見えた一幕だった。 国土交通省案件のゼネコン工事は相当な裾野を持つ。その分野にも影響力を持つ二階の捜査が事実上ストップしていることは何を物語るのか。検察的“正義”。括弧つきの“正義”の底が割れている。そうした冷ややかな目が検察に向けられている。 児玉 博(こだま・ひろし) ノンフィクションライター。1959年生まれ。主な著書に『降臨―楽天・三木谷浩史の真実』『幻想曲 孫正義とソフトバンクの過去・今・未来』(共に日経BP社刊)などがある。 |
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