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アメリカは戦後約六十年、第二次世界大戦の勝利の遺産をタテに日本に軍事基地を置き、アメリカの好みにあった諸政策を日本に高圧的に押しつけてきた。 今の日本はそのアメリカの軍事的、経済的指示の下で機能しているのにすぎない。
つまり日本はアメリカによって割り当てられた範囲の中で外交政策を立案、実施しており、その政策のほとんどが国際社会におけるアメリカの目標を達成させるための補完的な役割を果たしているにすぎない。 その意味では悲しいことだが、日本政府は先進民主主義国の中でも最も破滅的に不能な政府の一つだと言っていい。 1949年以降、政権の座についてきた自民党は腐敗し、無能化しているだけではない。 遺物化しているのだ。 かつて反共の橋頭堡としての役割も、官僚制支配の「公の表紙」としての役割も今や無用の長物になってしまった。 確かに2001年4月、自民党の一般党員たちが大ボスや幹部たちが推す総裁候補を蹴って、変人だがカリスマ性のある小泉純一郎を選んだ時には、陳腐で古めかしい自民党に新しい息吹がでたのではないかと思わせた。 だが、その小泉が実質よりスタイル、真の改革よりも口先だけの変革に終始し始めるやいなや、国民はその見せ掛けのリーダーシップに再び失望してしまった、と言うのが現実だ。 なぜアメリカは沖縄に地上軍を駐留させておきたいのであろう。 その第一の理由はカネだ。日本政府は沖縄や他の日本国内に米海兵隊や他の部隊を駐留させているのに必要な経費を年間20億ドルも支払っている。 これは他の「同盟国」に比べたら破格に気前のいい話だ。 沖縄は本州とは異質の文化を持つ国家だったが、19世紀に日本に力ずくで併合された。 その意味ではアメリカがプエルトリコやハワイを併合したのによく似ている。 そうしたこともあって日本人は沖縄県民に対して、かつて植民地化した朝鮮や中国、台湾の人々に対して抱いているのと同じような根強い優越感を持っている。 事実、アメリカはこうした点を踏まえて日本全土の土地面積の1.6%しか満たない沖縄に75%の米軍基地を置くという差別的な政策をとってきた。 今ひとつ、米軍が沖縄を手放さない理由は、沖縄が好きだからだ。 生活環境は米本土よりずっと良い。 すべての施設は米軍経営で、地元沖縄当局の管轄権は一切及ばない。 これこそ米軍が沖縄から出てゆきたがらない大きな動機になっている。 また米軍の沖縄駐留は米兵による地元婦女子に対する暴行、傷害事件を生み、殺人事件まで起こしている。 飲酒運転していた米兵たちのひき逃げ事件、環境汚染、住民たちの市民生活を絶え間なく妨害する戦闘機やヘリコプターの騒音など、どれ一つとってみても、アメリカ市民だったら絶対に許されない行為である。 沖縄はかつてのベルリンの壁によく似ている。 それは日本および他の東アジア地域全体をアメリカが占領しているというシンボルである。 もし沖縄が反植民地的反乱を起こしたら、東アジアのアメリカン・パワーの牙城は音を立てて崩れ落ちるだろう。 ペンタゴンとその追従者である日本政府は間断なき圧力で沖縄県民の抵抗をくじいてきた。 沖縄県民は日本の国会には何らの影響力もない。 外務省はアメリカというパトロンのために沖縄県民を食い物にし続けてきた。 そうした中で沖縄県民はもはや圧制者への直接的な抵抗は諦め、日本政府から出来るだけカネを引き出そうという戦術に切り換えたかに見える。 沖縄県民は県知事や重要な市の市長に親自民の人間を選んでいるし、国内最悪の失業率にあえぐ若者たちは本土政府からの助成金増額のみを望んでいるのが現状なのだ。 そうした中で、沖縄問題を平和裡に解決する方法は、日本政府がアメリカに対し沖縄からの米軍撤退を「懇願」せざるを得ないような、大規模な大衆蜂起を誘発させる「事件」でも起こることだ。 日本政府のそうしたスタンスは中国や他のアジア諸国から賞賛されるだろうし、それこそ日本がついに成熟した独立した民主主義国家となったことを示すシグナルにもなるだろう 最後は、チャルマーズ・ジョンソン氏の持論である「どんなに苦しくとも日本は自立しろ」と言う結論になった。 彼の、アメリカの衛星国家としての日本から、独立国として、米国とはじめとする貿易相手国との互恵的な通商関係を築くべきだという提言は、日本社会の全面的な社会革命をめざす我々にとっても、十分傾聴に値する。 『サピオ』2005年6月12日号 チャルマーズ・ジョンソン(Chalmers Johnson, 1931年-) アメリカ合衆国の政治学者。 アリゾナ州フェニックス生まれ。 カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得。 カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授を経て、現在、民間シンクタンク「日本政策研究所 The Japan Policy Research Institute」所長を務める。 おしまい |
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